建設ニュース

復興バブルに困惑

東日本大震災関連の工事費1.5倍増加

東日本大震災の被災地で建設工事費が高騰し、復興の足かせになっている。建設バブルで人件費や資材費が増加、複数の建設業界関係者が「工事費は震災前の水準の1.5倍になった」と語る。被災した中小企業が、工場再建を図ろうとして計画以上に膨らんだ自己負担に苦しむ一方で、公共工事は震災前と同水準の価格で推移しているため、建設業者が敬遠している。被災地では「これでは復興が進まない」と危惧する声が強まっている。

宮城県南三陸町で水産加工業を営む会社社長は津波で工場を失い、鉄骨二階建ての新工場建設を決めた。設計会社と相談し、建築費を二億九千万円と見込み、昨年六月、うち七十五%の補助を受けられる県の制度に申請して認められた。

ところが、同十月に建設業者三社に見積もりを頼んだところ、全社から四億円以上を提示された。業者からは「震災で人件費や資材価格が高騰している」と説明された。建材節約などで三億三千万円に圧縮したが、「高騰分」の四千万円は補助対象外で、自己負担となる。「ある程度の高騰は予想していたが、ここまでとは......。再建に二の足を踏む業者もあるはずだ」と社長は嘆く。補助が決まったのに建設費高騰などで「着工を延期したい」などと県に相談してくる被災企業もあるほどだ。

同県内の建設業者によると、建材やトラックのチャーター代、作業員の賃金など建設にかかわる「人」「もの」すべてが値上がりし、集めるのに苦労しているという。ある業者は「建設費を決め、工事をする数カ月の間にも価格高騰は進む。その分うちがかぶらざるを得ない。高騰が急すぎる」と話し、建設業者側も困惑している。

一方、宮城県の公共工事は昨年四~十一月に入札した建設工事591件のうち137件が応募がないなどの理由で不成立だった。不成立の割合は23%で前年度(3%)から大幅に上昇し、工事費が民間発注より低水準に抑えられていることも背景にあるという。

小規模工事ほど応札がなく、県は複数工事を組み合わせて大規模にしたり、参加資格を広げたりして入札を繰り返している。四回目でも決まらなければ特例として随意契約に切り替えることも決めた。

このままだと被災地の復旧に支障をきたす恐れもあり、県契約課は「工事急増で建設会社も混乱している。多くの業者が入札に参入しやすくなるよう規制緩和を国にも求めていきたい」としている。