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海底トンネル事故

JX日鉱日石エネルギー水島製油所で発生した海底トンネル事故の原因について、業者や専門家は掘削機のトラブルや地盤の問題などさまざまな可能性を示唆する。現場で一体何があったのか―。トンネル掘削に採用された「シールド工法」は安全性が高く、日本は世界トップクラスとされるが、「安全が過信につながったのでは」と“油断”を指摘する声もある。

シールド工法は、シールドマシンと呼ばれる円筒形の大型掘削機で土を掘り進めると同時に、トンネル内壁をコンクリートブロックで固める方法。厚生労働省安全課によると、1989年以降、シールド工法による海底や陸地部でのトンネル工事における死亡事故はこれまで無かった。

西日本のある建設業者は「シールド工法で仕上げた横は、まず壊れない」とした上で、「掘削機内部にある土砂排出装置に何らかのトラブルが起き、土砂流入が止まらなくなって落盤、大量の海水流入を招いたのでは」と推測する。

トンネル掘削に詳しい名古屋工業大の中井照夫教授(地盤工学)も「計器類の不具合か人為ミスなのかは検証が必要だが、天井部分を削りすぎ、土砂が自重に耐えきれなくなって崩落した可能性はある」と言う。

一方、現場の地盤について、岡山大大学院の西垣誠教授(地盤工学)は「水島港の海底は軟らかい粘土層が20〜30メートルあり、その下に砂利などの礫(れき)層などがある」と説明。別の業者は「掘削機が軟弱な地盤に沈みこみ、トンネルの亀裂や落盤を引き起こしたのでは」と指摘した。

さらに、工事現場の海底のボーリング調査が行われていなかった点に触れ、「不況による入札価格の低下で工事費削減のため地質調査を省いたことも考えられる」と話した。

工事元請けの鹿島は約10年前、隣接する海底トンネルを建設した際に行った地質調査の結果を参考にしたといい、「土壌や土質は想定通りで問題なかった」と説明している。

水島コンビナートの防災審議会長を務める岡山大の鈴木和彦教授(安全工学)は「シールド工法は絶対に安全だと過信してしまったのでは」と指摘。「海底を工事する限り、海水流入のリスクはある。避難マニュアルの作成は基本だし、避難場所の設置、酸素ボンベの用意などの対策も必要だった」と話した。